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OEM vs テックジャイアント - L4自動運転を最初に商用化するのはどちらか?




世界各国でレベル4自動運転技術のテストが行われており、業界における自動車の利活用のあり方が変わりつつあります。現在、これらのテストの多くは、消費者向けにカスタマイズされた様々な商用自動運転サービスを開発・拡大するために、L4技術がどのように利用できるかを調査しています。こうしたサービスのメリットや収益機会の認識が広されるようになる中、従来のOEMと新たなテック企業が同じように同分野に引き寄せられ、L4のトライアル領域で共存する今、誰が最初にトライアルの段階を突破しL4自動運転の完全な商業化に成功するのかに注目が集まっています。


L4自動運転の現在地

L4自動運転の実証試験はその開始以来、範囲が大幅に拡大しており、一部のプレーヤーは商用化を目前に控え、その実現のために政府と連携しています。例えば、Pony.aiは最近、広州の南沙で100台の自動運転車をタクシーとして運用し、その地域の乗車賃を徴収する認可を取得しています。この認可により、これらのロボタクシーは、PonyPilot+アプリを通じた予約・決済、午前8時30分から午後22時30分までの間の運行が可能となります。Pony.aiは今後、広州でさらにサービスを拡大し、より多くの消費者層の獲得を目指しています。


拡大性、収益性の高いサービスを運営することは、現在同様の実証試験を行っている企業が共通して有する目標です。OEMにとって、このようなサービスは新たな成長とパートナーシップの機会を提供するものであり、自動車業界を活用して拡大を目指すテックジャイアントにとっては、エントリーポイントとなります。


OEM #1GM (クルーズ)

2016年のGMによる買収後、CruiseはGMによる消費者向けの自動運転の取り組みを動機付け、有効化するという役割を担っています。今日の取り組みの中心は、GMとHondaが共同開発し、さまざまなユースケースに対応するよう設計され、グローバルで量産・展開するために構築された専用自動運転車「Origin」です。


Cruiseの最初のドライバーレスでの実証試験は2021年11月に始まり、同社の従業員だけでなく、ウェブサイトで登録した顧客にもサンフランシスコ周辺での無料乗車を提供しました。この第1段階のフェーズと、2022年2月の実証試験公開を経て、Cruiseは2022年6月にカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から第1段階のドライバーレスでのパッセンジャー向けサービス展開許可を取得した。この許可により、クルーズのサービスは、午後10時から午前6時の間の運行および、一部の乗車に対しする課金の開始が可能となりました。


GMは第1四半期の決算発表で、Cruiseへの投資額を2022年までに20億ドルと見積もりましたが、これは同社とそのスケールアップ能力への自信を示すものです。この投資により同社は現在、2022年末までにテキサス州オースティンとアリゾナ州フェニックスにロボットタクシーサービスを拡大する計画です。2023年にはOriginを量産化し、ドバイでサービスを開始する予定です。これらの目標や期限は野心的に見えるものの、これまでのサービスの成功やGMの支援により、Cruiseは大規模な商用化に向けて正しい道を歩んでいるといえるでしょう。


テックジャイアント #1:アルファベット(ウェイモ)

Alphabet(当時はGoogle)は、それまでの自動運転技術のテストに続き、2016年12月、人とモノに安全で簡単な移動手段を提供することを目的に、自動運転技術の子会社Waymoを立ち上げました。WaymoはCruiseと異なり、独自の商用自動運転車の開発を目指すのではなく、他の車両に搭載可能な独自の自動運転技術を開発することを優先していました。このようなアプローチを早い段階から取ることで、目標の達成を可能にする業界とのパートナーシップによるエコシステムの構築が実現しました。


Waymoは、Alphabetの先行テストで使用された車両フリート(専用の自動運転車プロトタイプを含む)を継承し、自社のテストに活用しました。この基盤により、同社はより迅速にテストを開始し、規模を拡大することができ、2017年4月の公開テスト開始に先立ち、FCA(当時Fiat Chrysler Automobiles、現Stellantis)と提携してChrysler Pacifica Hybridミニバン100台を調達しました。この第1のフェーズ「Early Rider Program」は、アリゾナ州フェニックスで始まり、住民に対し自動運転フリートへの無料乗車体験を提供しました。各車両にはセーフティドライバーが同乗し、Waymo Driver(車両のセンサー群、車載論理ソフトウェア、およびそれを支えるクラウドデータとインフラからなる自律走行システム)が搭載されていました。2017年、WaymoはAvis Budget Group、Lyft、AutoNation、Intelとの新たなパートナーシップを発表し、デトロイト近郊で冬の気象条件に対する技術をテストし、フェニックスでドライバーレス試験の開始を発表しました。


以来、Waymoは急成長を遂げており、FCAやJaguar Land Roverとの新たな提携によってフリートを強化する一方、2018年にはフェニックス向けのロボタクシー・パイロットサービス「Waymo One」を開始しました。2019年にはRenaultやNissanと提携して、日本やフランスへのサービス導入を検討し、さらにVolvo Carsとも同様の契約を締結しています。2020年Waymoは、自動運転配送事業でWalmartおよびUPSと提携し、自動運転トラックの子会社であるWaymo Viaを立ち上げましたた。同年末までに、この新子会社はDaimler Trucks、J.B. Hunt、C.H. Robinsonなどとの長期提携を結んでいます。


こうしたコラボレーションは、L4領域での成長を目指す新しいプレーヤーをサポートするものですが、Waymoのアプローチは、Alphabetに明確なエントリーポイントと新たな成長機会をもたらしました。Waymo Oneをサンフランシスコとロサンゼルスに導入するにあたり、ニューヨークでの新たなトライアルやインターナショナルな拡大計画によって、Alphabetは大規模な商用化に向けて確固たるロードマップを構築したように見えますが、これを実現するには多くのパートナーシップを継続的に実現し成功させることが最も重要となるでしょう。


商用化までの道のり

L4 自動運転の大規模な商用化は、テックジャイアントとOEM にとって同様に果たすべき大きな課題であり、両者の内いずれかが一夜にして達成することはないでしょう。同様に、真にグローバルなL4サービスのテスト、トライアル、運用を目指す企業は、多くのハードルを乗り越えなければなりません。しかしながら、CruiseとWaymoが示した成果、野心、スケーラビリティは、L4自動運転を世界各国の消費者の生活により密接に統合すること、特に身近で利用しやすいサービスとして統合することに向けた前進を示しています。



本記事で取り上げたトライアルは、より幅広い動向の内のほんの一部に過ぎません。今日、L4車両を含む多数のパイロットサービスが世界各国で実施されており、詳細は「レベル4以上の自動運およびトライアルガイド」にまとめています。同書では、ADASおよび自動運転のエキスパートが、これらのパイロットがターゲットとしているセグメントを明らかにし、使用されている技術およびそれに関与するパートナーを特定しています。付属のExcelファイルでは、サービスカテゴリ、テクノロジー、ロケーション別にそれぞれのパイロットサービスのデータを提供しています。


「レベル4以上の自動運転およびトライアルガイド」の詳細は下記からご覧いただけます。


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