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コネクテッドサービスの可能性を引き出す鍵は、サブスクリプションの効率化にある

Updated: Aug 15

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自動車メーカーがコネクテッドサービスを収益源として確立しようとする中で、北米および欧州市場では、よりシンプルかつ統合されたバンドル型の提供へと舵を切るOEMが増えています。

現状の市場では、完全カスタム設定やアラカルト型のプラン構成が主流となっていますが、これらは多くの消費者にとって複雑すぎるうえ、車両購入後に細かく課金されるような印象を与えてしまいがちです。こうした状況を受けて、近年では複数のブランドが提供形態を見直し、サービスをシンプル化する動きを強めています。パッケージの簡素化や無償提供期間の延長は、OEMが顧客の声に耳を傾け、購入時点でスムーズにコネクテッドサービスへ誘導しようとしていることの表れです。



David Ball, Senior Consultant at SBD Automotive
David Ball, Senior Consultant at SBD Automotive

SBD AutomotiveのシニアコンサルタントであるDavid Ballは次のように述べています:


「私たちの定性・定量調査の結果、常に一貫して見られるのは“シンプルさ”への明確なニーズと、“選択肢が多すぎることへの戸惑い”です。消費者はナビゲーション、安全性、セキュリティなどの高付加価値機能を重視する傾向にありますが、イノベーションの加速と“買い切り vs. 月額課金”といった多様な価格体系が混在することで、判断がより複雑になっています。この混乱はOEMと消費者の間に摩擦を生み、購入意欲やブランドの口コミ評価にも悪影響を与えかねません」


近年では、新車購入時にベースとなるコネクテッドサービスを8年から10年という長期で無償提供するOEMが複数登場しています。これは、従来のサブスクリプション課金ではなく、サービス費用をあらかじめ車両本体価格(MSRP)に含める方向への転換を意味しており、サブスクリプションに対する消費者の否定的な反応を踏まえた正しい対応と言えるでしょう。


出典 SBD Automotive – HY1 2025 Connected and Digital Services Guide。注 一部の自動車OEMは複数のコネクテッドカーサービスプログラムを提供しており、無料試用期間に差があります。
出典 SBD Automotive – HY1 2025 Connected and Digital Services Guide。注 一部の自動車OEMは複数のコネクテッドカーサービスプログラムを提供しており、無料試用期間に差があります。

米国では、Stellantisがコネクテッドサービス提供形態を再編し、全ブランド共通のサービスへ一本化すると発表しました。同社は今後、次の2種類のみを用意します。

  1. 購入後10年間の無償ベースパッケージ(OTAアップデート、車両ヘルスアラート、車内ゲーム、デジタルキーなどを含む)

  2. プレミアム有料プラン(盗難車追跡、Wi‑Fiホットスポット、コネクテッドナビゲーションなどを含む)

多くのプレミアムプランは依然として短期間の無料試用(1年以内)が主流ですが、Lincolnは上位グレードの車両購入者に対してBlueCruise(Fordの手放し高速運転機能)を4年間無償提供するなど、長期試用を実施する例も見られます。



これらの戦略的な進化は、OEMが顧客との接点を自然に広げ、コネクテッドサービスの利用と定着を促す基盤を築くものです。先進的な企業では、まずは無償のベース機能を通じてユーザーとの関係を構築し、そこからプレミアムコンテンツのサブスクリプションへの移行を促す導線を整えています。

特に重要なのは、ベースの接続パッケージを車両価格に含めて提示する戦略です。これにより、消費者の「一括価格で済ませたい」というニーズに応えることができます。もちろんこのアプローチを成功させるには、OEMが無償提供する機能そのものに十分な魅力を備えていることが前提となります。セキュリティ、リモート操作、ADAS、L2+といった分野での高品質な機能提供が、プレミアムサービスへの関心を生む鍵となるでしょう。

Connected & Digital Service Guide
Connected & Digital Service Guide

今後数年間で、より包括的な長期無償バンドルと、それに追加できるプレミアムサブスクリプションという構成が主流になると予想されます。自動車サブスクリプションモデルに対する消費者のフィードバックを踏まえると、洗練された「シンプルバンドル」の導入は、エンゲージメントの向上と自然な形でのサブスクリプション収益の拡大につながるポジティブな変化になるはずです。



USA、EU、中国における最新のコネクテッドカーサービスや各OEMのモデル、サブスクリプション体系を詳細に網羅した「526 Connected & Digital Services Guide」もご覧ください。

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