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ミヒャエル・グラフ

SBD Explores: EVの800V化の動向、自動車メーカーはこれを採用すべきか?





800Vアーキテクチャーが自動車メーカーによって導入されつつあります。この新たなアーキテクチャーは、特に消費者体験に関連して、自動車メーカーに競合他社に対する大きな優位性をもたらす可能性があります。しかしながら、これには現行の400Vアーキテクチャよりも高い製造コストがかかります。

800Vアーキテクチャーの採用は初期段階にあり、この技術が成功するためには、適切な充電インフラが必要です。またインフラは、高速充電に対する消費者の需要のペースに歩調を合わせる必要があります。

今回のSBD Explores では、現在の800V市場のスナップショットを提供し、800V化の利点、欠点、主要プレーヤーについて概説します。


同分野における動向

800Vのバッテリーおよびシステムはすでに部品メーカーから提供されています。このため、一部の自動車メーカーはこの技術を採用し、800V車両を市場に投入しています。充電ポイントプロバイダーは、800V対応充電器を利用できるようにすることで、こうしたタイプの車両への対応を拡大しています。

  • EUでは、800Vの充電ステーションが着実に増えています。米国での伸びは停滞気味です。

  • 米国における800V充電器の伸び悩みは、米国における800V車両の台数の増加と対照的です。米国ではEUと比べ、より多くの800V車モデルが提供されています。

  • 中国で市販されている800Vモデルの種類は少ないものの、SBDはこれが増加すると予想しています。BYDはe-Platform 3.0で800Vセグメントに強い存在感を示しており、Xpengは800Vアーキテクチャの最新モデルG9を発表しています。


なぜ、それが重要なのか?

既存の400Vアーキテクチャから800Vアーキテクチャへ移行することには様々な利点があります。SBDでは、OEMがこれらの利点を定量化することで、800V技術への投資が正当化されること見ています。

  • 800V技術が消費者に直接与える主な影響としては、充電時間の短縮が挙げられます。800Vアーキテクチャは、800V対応の充電器と併用することで、より速い充電時間をサポートすることができます。

  • 800Vアーキテクチャーでは車両重量を減らすことが可能です。電圧を上げると、使用する電流が少なくなり、ケーブルを細くしたり、電子部品を小さくすることができます。これにより、重量と製造コストの一部が削減されます。また、低電流化により熱で失われるエネルギーが減るため、効率も向上します。

  • 高電圧バッテリーは電気駆動モーターにより大きな電力を供給し、400Vのアーキテクチャーよりも車両が軽量化するためより優れた回生ブレーキを実現することができます。これにより車両効率の向上にも貢献します。

  • 800Vアーキテクチャーは、市場シェアが小さいことや技術の黎明期であることから、400Vアーキテクチャーよりも製造コストがかかります。



今後の展望

米国とEUにおける800V車両の販売台数と800V充電器の数の比率を比較しました。車両台数とは、2019 年 1 月からそれぞれ下記に示す特定の四半期までに販売された車両台数の累計を指します。これをそれぞれの四半期において利用可能な充電ステーションの数と比較しています。

  • 800V車は、米国よりも先にEUの消費者に受け入れられると見られます。というのも、EUでは米国よりも公共充電の利用頻度が高く、EUのユーザーにとって充電時間の短縮はより重要になるからです。

  • ECは充電速度の最低要件を定めていおり、現在の法律では、主要幹線道路沿いのステーションには150kWの充電器を1基以上設置することが義務付けられています。充電事業者は、自社の資産を将来も有効に使用できるよう、充電器に800V技術を含めることが多くなっています。

  • 米国では、800Vステーションを建設する以前に、既存の充電インフラに対処すべき課題(稼働不能またはフル稼働していない)があります。NEVI Formulaプログラムは、充電ステーションのさらなる拡大を支援するために各州に資金を提供するものです。


注視すべきこととは?

本記事を書いている時点で、市場には16の800Vモデルが存在しています。これらのモデルは8つのOEMから提供されています。これらのOEMは800Vアーキテクチャに関して早い段階から経験を積んでおり、今後重要な優位性を握ることになるでしょう。

  • Porscheは800Vアーキテクチャーを採用したモデル1つを提供しているのみであるものの、この技術を量産車に導入した最初のOEMです。Volkswagen Groupはその後、この技術をAudi に展開しています。Volkswagen Groupは、この技術の開発と改良を続け、まずはこの2つのブランド内で拡大し、その後量販ブランドに展開していくと予想されます。

  • Hyundai Motor Groupは、同社のすべての車両ブランドで800V技術を導入しています。

  • BYDとXpengはEUにおいて800V車両を導入することを計画しています。これによる業界への影響は大きいでしょう。中国のOEMは800Vの部品をはるかに安く製造することができます。このため、欧米のOEMよりも充電時間の速い車両をより早く市場に投入できるようになると予想されます。

  • GMはGMC Hummer EVで初めて800Vアーキテクチャーを導入しました。EV仕様のCadillac Escaladeも800Vとなる予定です。


とるべき対応

Prepare

もしまだ着手していないのであれば、EVを生産している自動車メーカーは、将来のラインナップに800V車を含めることを計画すべきです。


Implement

OEMはまず、800Vアーキテクチャをハイエンドモデルに導入すべきです。その後、この技術はエントリーレベルの自動車にも浸透していくでしょう。


Refine

800Vアーキテクチャーは、規模が大きくなるのに伴い安価になります。その間に、消費者に対しコストの透明性を確保するために、量産車のオプションとして800Vを提供することを検討すべきです。


詳細に関するお問い合わせ

SBD Automotiveではカスタムプロジェクトを通じて、クライアントが新たな課題や機会へ取り組むことを支援しています。EVおよび充電インフラに関連する最近のプロジェクトに関する詳細や、その他ご要望についてはSBD Automotiveジャパン(Postbox@sbdautomotive.com)までお問い合わせください。



 

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