自動車メーカー各社はバッテリー化学の分野における新たな進展を注視しています。既存のリチウムイオンバッテリーは高いエネルギー密度、長いサイクル寿命、コスト削減の点で優れており、今後10年間にわたってバッテリー市場を支配する可能性が高いと見られるものの、その性能には理論的な限界があります。
リチウムイオンバッテリーの性能は、より高い密度のカソードやアノード(ニオブやシリコンなど)によって強化することができます。また、固体および半固体バッテリーは、より高性能な代替技術として期待されています。
今回のSBD Exploresでは、これら2つの新しいバッテリー技術について掘り下げ、自動車業界への潜在的な影響について考察します。
同分野における動向
OEMはEVの航続距離を伸ばすための新技術を模索しています。従来のリチウムイオン電池は、電極間でリチウムイオンを移動させるために液体電解質をしていますが、OEMは現在、固体電解質インターフェースを組み込んだ新しい形態のリチウムイオン電池に投資しています。
OEMとサプライヤーは現在、半固体電池と固体電池の2種類の電池設計を開発中です。どちらも液体電解質の一部または全部を固体電解質に置き換えたものです。
半固体電池は、電極間でイオンを伝導させるために、固体導電材料と液体電解質を組み合わせており、従来のリチウムイオン電池に比べ、液体電解液の量が大幅に少なくなっています。
固体電池は液体をまったく持たず、電解質として純粋な固体材料のみを使用します。
なぜ、それが重要なのか?
半固体電池や固体電池には、従来のリチウムイオン電池と比較して、主に液体電解質を減らすか、完全に使用しないことによる重要な利点がいくつかあります。
液体電解質は、電極間のイオンの流れを制限するため、低温下では性能に問題が生じる可能性があります。
可燃性の液体電解液が存在する場合には、安全性の問題が生じます。半固体電池はこのリスクを軽減し、固体電池はこのリスクを排除します。
性能面では、半固体電池は一般的に従来のリチウムイオン電池を上回るが、固体電池には及ばないとみられます。
固体電池の性能と期待される信頼性を向上させるには、新たな製造プロセスへの大規模な投資が必要です。
注目すべきは?
半固体電池と固体電池の両方が並行して開発されており、自動車用と非自動車用では半固体電池の方が固体電池より成熟しています。固体電池は、その設計・検証プロセスにおける技術的・商業的な挑戦が続いており、長い間「(実現は)5年先」とされてきました。
非自動車用途のエネルギー貯蔵ソリューションとバッテリーは、積極的に展開されています。この分野からの洞察が、技術的に要求の厳しい自動車分野での技術の改良をサポートすると期待されます。
中国では半固体電池の自動車への搭載が進められており、固体電池が市場へ投入されるまでに、さらに多くの車種へ搭載されることが予想されます。NIOのバッテリースワッピング技術は、こうした新しい化学物質の実環境でのテストやサンプリングをサポートしています。
固体電池の生産車両への搭載の準備は未だ整っていません。
今後の展望
複数の自動車メーカーが半固体電池と固体電池の価値を認識しており、ほとんどのOEMでは、半固体電池は固体電池よりも早く生産が開始される可能性が高いと見られます。
半固体電池と固体電池の市場導入に影響を及ぼす主な要因:
より航続距離の長い電気自動車に対する継続的な消費者の需要により、OEMやサプライヤーはさらなる技術開発を進めることになると見られます
しかし、消費者が航続距離の延長にはコストがかかります。新しいバッテリー技術を搭載した自動車は、製造プロセスが開発途上で未成熟であるため高額になる可能性があります。
製造プロセスの成熟が進めば、コストを下げることができ、より多くの自動車にこれらのバッテリー技術を搭載できるようになります。
車載EV用電池向けの化学物質としてはNMCとLFPが主流です。NIOは自動車メーカーとして初めて半固体電池を量産化しました。
自動車のラインアップに半固体電池の採用を検討するOEMが増加しています。半固体電池を搭載した車両はリチウムイオン電池車よりも高額になると見られますが、航続距離の伸びを考えれば妥当と考えられます。
固体電池はプレミアム車から大規模な採用が始まると予想されます。従来のリチウムイオン電池は、低価格EV用として引き続き使用されるでしょう。
半固体電池も低価格EVに採用されるようになり、固体電池はより広く利用されるようになるでしょう。
とるべき対応
Build
OEMやバッテリーサプライヤーとの提携や合弁事業を継続し、新しいスケーラブルなモデルを開発する
Understand
様々なバッテリー技術が、現在/近い将来/未来のEV価格にどのような影響を与えるかを理解し、それに応じてモデルの仕様と価格設定を計画する
Invest
EVの分野における先進性を追求するにためには、半固体電池や固体電池に限定されない新たな形の電池技術に投資することが必要。重要な可能性を秘める代替負極・正極材料も検討。
詳細に関するお問い合わせ
SBD Automotiveではカスタムプロジェクトを通じて、クライアントが新たな課題や機会へ取り組むことを支援しています。電気自動車やその技術に関連する最近のプロジェクトに関する詳細や、その他ご要望についてはSBD Automotiveジャパン(Postbox@sbdautomotive.com)までお問い合わせください。
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