このページのトップへ

UXベンチマーク評価 - Acura ZDX

Brandon Miller
ヘルスケア、ウェルビーイング、V2G技術は、自動車業界にどのような影響を与えるのか?

OEM各社はソフトウェア(SDV)実現に向けた取り組みを続けており、車両に搭載される技術の数も、ユーザーエクスペリエンス(UX)に対するそれらの技術の重要性も増しています。しかし、これらの技術の成功は、UXをシームレスで満足のいく方法で提供できるかどうかにかかっています。それにより、OEM、開発者、サプライヤーは、製品のローンチを成功させるとともに、車両とそのデジタルサービスのエコシステムに対する長期的な顧客ロイヤリティを醸成させることが可能となります。

 

SBD Automotiveが発行する車載HMI UXベンチマーク評価レポートシリーズでは、HMI機能が車載ユーザーエクスペリエンスにどのような影響を及ぼすかをプラスとマイナスの両面から調査しています。SBDのベストセラーかつロングランレポートの1つである本レポートは、グローバルに提供されている最新のHMIシステムを包括的な分析・評価を行っています。2024年は、6車種のシステムを対象とし、SBDのUX専門チームがテストおよびベンチマークを行うことで、誰がこの分野をリードし、誰が遅れをとっているのかを明らかにします。

 

2024年11月に日本語版が発行された2024年型Hyundai Kona ElectricのHMI UXレポートの記事に続き今回のインサイトでは、2024年型Acura ZDXに搭載されたシステムを分析するシリーズ最新版レポートについて紹介します。同車両のIVIおよびUXについて概説するとともに、最も興味深いテクノロジーをピックアップしその長所と短所について解説します。またそれらがエンドユーザーエクスペリエンスに与える影響についても分析します。


Acura ZDXの詳細

Acura ZDX -SBD Automotive の2024年の対象車種のうち、最も最近評価を実施したモデル

新型ZDXは、テクノロジーにフォーカスしたコックピットを提供しています。Acuraとして初めてGoogleビルトインを統合し、Googleアシスタント、Googleマップ、Google Playストアなどのネイティブアプリを提供しています。

 

GoogleビルトインはZDXの11インチのプレシジョンコックピットドライバーインフォメーションクラスターと11.3インチのセンターインフォメーションスクリーンに統合されています。センターインフォメーションスクリーンでは、タッチコントロールに加え、ワイヤレスのApple CarPlayとAndroid Autoの利用が可能です。ZDXでは、OSが提供する一連のアプリケーションをこれらのディスプレイのいずれにも表示できるようになっており、例えばGoogleマップでは、ルートプランニングを強化し、移動時間を最適化するための推奨充電ステーションを表示することが可能です。また、このネイティブ版Googleマップは、目的地に到着するまでに必要な充電時間を推定する機能を備えています。さらにユーザーがDC充電ステーションを目的地として選択した場合、バッテリーのプリコンディショニングを自動的に開始することができます。

 

主なポイント

ZDXのテストにおいて、SBD AutomotiveのUX専門チームは、Googleビルトインの採用が、今日の自動車業界に影響を及ぼしているより広範なムーブメントを象徴していると指摘しました。市場全体でその普及がすすんでおり、その結果さまざまなOEMからリリースされた多くの車両で評価されることとなっています。これらの評価を通じて、このOSが全体的なユーザーエクスペリエンスにもたらす長所と短所の共通点が、様々な実装事例から明らかになってきています。

ZDXに搭載されたGoogleビルトインの主な強みは、その親しみやすいUXです。アプリの多くは、Googleのモバイルアプリで提供されるエクスペリエンスに酷似しています。SBDの専門チームが特に高く評価したのは、Google Playストアで、モバイル版と同様、デジタルストアフロントを提供し、ユーザーが車両の機能や特徴を拡張できるようになっています。また、Googleマップの検索ロジックと、そのPOIによって提供される情報の深さも評価されました。しかしながらGoogleマップは、Googleビルトインの実装に見られる一般的な弱点も示しました。POIカテゴリの欠如や「保存/お気に入りの目的地」機能のわかりにくい実装は、アプリのUXを損なうものでした。Googleアシスタントは、テスト中に発生した安定性の問題やバグの数、そして他の入力方法を認識できないことが多いという点で、同様の弱点を示しました。


SBDの専門チームは、これらの共通するプラス面とマイナス面が、今日の多くの自動車におけるUXに対してGoogleが持つ影響力を示していると指摘しました。その上で、ADAS、ラジオ、電話機能などの、Googleのネイティブ機能以外の領域でイノベーションを推進することが、Googleビルトインを採用するOEMにとって重要であると強調しました。

 

この必要性は、Acura ZDXのUXにおいて最も顕著な弱点である独自のラジオシステムの実装によって浮き彫りになりました。専門チームは、この実装により、システムに致命的な安定性の問題があり、何かが正常に機能していない」と感じさせる可能性が高いと指摘しました。さらに調査を進めた結果、オーナーズマニュアルには「FM信号は約16~65km(10~40マイル)しか届かない」と明記されていることが判明しました。

 

AM/FMラジオのUXに関する問題は、さまざまな画面で使用されているアイコンにも及んでおり、専門チームは、その混乱と一貫性の欠如を指摘しました。主な例としては、「ソース」ボタンのアイコンがその機能を明確に示しておらず、むしろやり直しの矢印に近いデザインになってる点が挙げられます。この問題は、ZDXの「ダイレクトチューン」アイコンの並置や、FM/AMラジオとSiriusXMラジオの画面間の一貫性のないボタンレイアウトでも同様に指摘されました。

 

こうした問題点を指摘する一方で、専門チームは、FM/AMラジオが自動車業界において基本的な機能として広く認識されており、スムーズで効率的なユーザー体験を提供するためには、その実装を変更すべきではないと強調しました。専門チームは、ZDXはこの体験を提供できておらず、ユーザーを混乱させ、ラジオがまったく機能していないと感じさせる可能性が高いと結論づけました。こうした不十分な実装は、システムを使い物にならなくし、ユーザーを失望させるため、機能がまったく提供されていない場合よりも、UXに対する悪影響が強くなると専門チームは見ています。


分析

Acura ZDXのさまざまな機能やシステムにおけるUXを深く分析する中で、新たな強みが明らかになる一方で、いくつかの主要な弱点も浮き彫りになりました。特に、その強みの一つとして際立ってたのはADASで、例えばハンズオフ・パイロットドライビング・システムは、ハンドルに統合された帯状のライトを用いてステータスを伝え、ドライバーに制御を切り替える必要がある場合にはスムーズなハンドオーバーできるよう支援します。ZDXのリヤクロストラフィックアラート機能は、車両と歩行者を明確に区別しながら、ドライバーの後退時の安全性を高めるため、ユーザーに適切な警告を発する点で、特に高く評価されました。

しかし、専門チームは、ナビゲーションシステムのUXに影響を与えることが判明した問題に加え、システムのPOI機能がこのエクスペリエンスをさらに弱めていることを発見しました。この機能を使用して希望する目的地やPOIを入力する際、画面上のキーボードがGoogleマップの提供する検索候補を覆ってしまうため、特にモバイル版のGoogleマップアプリと比較すると、検索して結果を選択する際にフラストレーションが生じたり時間がかかったりする可能性があります。また、専門チームは、ナビゲーションシステムが提供するPOIの数が限られていることや、ユーザーがPOIを編集したりパーソナライズしたりできないことが、全体的なユーザビリティを制限していると感じていました。


次のステップ

全体としてAcura ZDXは、ADASやEV充電のような領域におけるAcura独自のシステムと、多くのユーザーが慣れ親しむであろうUXを提供するGoogleビルトインとの組み合わせを通じて、機能と技術を魅力的にブレンドしていると専門チームは評価しました。ZDXのテストにおいて専門チームは、Googleビルトインの実装が、現在GoogleがUXの領域で大きな影響力を持っていることを反映しており、OSがより一般的になるのに伴いその影響力を維持するであろうこと、Googleビルトインを採用している他のモデルと同様の長所と短所が見受けられることを指摘しています。

 

ただし、Googleビルトイン以外の機能の一部は評価しつつも、FM/AMラジオの実装については、そのシステムのUXだけでなく、車両全体にとって重大なデメリットであると専門チームは指摘しています。FM信号の受信が制限されていることや、デザインとレイアウトに一貫性がないことから、最終的にEVのUXに悪影響を与えていました。専門チームは、これらの問題がユーザーを混乱させ、フラストレーションを生じさせ、AM/FMラジオの使用を完全に放棄させる可能性があると考えました。

 

UXベンチマーク評価 - Acura ZDX
UXベンチマーク評価 - Acura ZDX

本記事では、Acura ZDXの全体的なUXにおける長所と短所の一部を紹介しましたが、これらは「UXベンチマーク評価 - Acura ZDX」レポートの本編にでまとめる評価のごく一部に過ぎません。150ページ以上に及ぶレポート本編ではADAS 、インフォテインメント、ナビゲーション、音声認識など、いくつかの重要な領域にわたる同車両の機能ユーザーエクスペリエンスについて、さらに深い洞察を提供しています。本書では、これらの特徴や機能をSBDの評価手法に照らして採点するとともに、2023年HMI UXレポートシリーズで評価した車両や、2024年版HMI UXレポートでレビューした他の車両に照らし、ZDXをより広範にベンチマークしています。

 

SBDのUXベンチマーク評価レポートシリーズでは、最新の車載HMIソリューション、そのエンドユーザーへの影響、どの車両が最も優れたユーザーエクスペリエンスを提供しているのかについて、専門家チームが包括的な評価を実施しまとめています。


 


下記より、SBDのウィークリーニュースレターを無料購読いただくことで、本シリーズの新刊発行時にいち早く情報をお届けいたします。



ページ下