SBD Automotive コネクテッドカー部門統括責任者 リー・コールマン
自動車業界では性能に関する統計値が重要視される傾向にあります。特に消費者が車両購入を検討する際の判断材料となるのは燃費や荷室の積載量、EVでは加速性能や航続距離など、単位や数値で示すことのできる属性です。自動車メーカー各社はこうした特性を利用して消費者へのアピールや、競合他社との差別化を図ってきました。
しかしながら、自動車メーカーにとって車両の販売と同様に重要なのは、いかに顧客を維持するかということです。顧客は今の車両に満足し、次の買い替え時に同じブランドの車両を選んでくれるのか?
繰り返しになりますが、自動車メーカーは、IQSやNPS、顧客満足度や信頼性に関する評価を基準にして自社の評価を行っており、業界全体がこうした定量化された数値や単位、評価を基準にする傾向にあります。
一方、自動車業界全体が定量化された数値を重視しているにもかかわらず、計測も数値化もされることが少ないものの、他の定量化された特性に劣らず重要な分野があります。それが、「本来の主体者であるユーザーにとっての車載機能の使いやすさ」についての評価です。顧客維持に最も大きな影響を及ぼすのが車両のユーザーエクスペリエンス(UX)であることは間違いありません。製品が使いやすく、ユーザーの期待通りに使用することができれば、そのユーザーは代替製品の購入など考えもしないでしょう。PhoneのUXが低いレベルにあるという理由でAndroidへの変更を考えるユーザーがどの程度いるか思いつくでしょうか?
しかしながら、学習しやすく、安全に使用でき、高機能でアップデート可能な車載ユーザーインターフェースの設計は、スマートフォンやタブレット上のインターフェースのようにはいきません。スマートフォンやタブレットを初めて使用する人にとって、端末を操作することは非常に没入感のある体験です(周りのことが見えなくなることもあるでしょう)。高速道路を運転中にドライバーがそのような状態になることは非常に危険です。このため、車内のユーザーインターフェースはより直感的に使用でき、ユーザーのニーズをより簡単にサポートできるようなものでなければなりません。
コネクテッドカーを「タイヤのついたスマートフォン」と表現するアナリストがいますが、自動車でスマホと同レベルのUXを目指すことは、必ずしも顧客満足や維持にはつながりません。自動車業界にとってこの10年間は、スマートフォンのUXのいいところだけをどのように車内へ適用すべきかを検討するための期間でした。現在、自動車メーカー各社が車両とユーザーのデジタルライフの安全かつ直感的な融合に取組んでおり、優れたUXとそうでないUXとの間で差が開きつつあります。
自動車業界の歴史が始まって以来、メーカー各社は性能統計を基準に自社の進捗状況や競争力を測定してきましたが、同様のアプローチをコネクテッドサービスのUXに適用し数値化することは可能であり、かつ必要であるとSBDでは考えます。
※2018年10月23日に開催される iid 5G mobility社主催のレスポンスセミナー「つながるクルマと自動運転/ユーザー視点でのHMI評価とプラットフォームの最前線」において、SBDのシニアエキスパートが来日し講演いたします。(セミナーは逐次通訳、日本語資料が配布されます。)
【セミナー開催概要】 開催日時: 2018年10月23日(火)13:30~17:00 【開場:13:00】 会場: イード・セミナールーム アクセス 申込締切: 2018年10月19日(金) 17:00 参加費: 32,400円(税込み) お申し込み、お問合せは こちら
【講師】 Lee Colman(リー・コールマン) SBD Automotive コネクテッドカー部門統括責任者 SBDのコネクテッドカー部門を統括。フリートマネジメントやテレマティクスを手掛ける企業での戦略的な製品管理、日産自動車(株)でのインフォテイメント研究開発、通信会社での製品定義などに携わり、2013年にSBDへ入社。自動車メーカーのパートナー選定、Tier 1 サプライヤーの市場参入、ソリューションの製品化、プログラムのリリースなどをサポートしている。
Deepa Rangarajan(ディーパ・ランガラジャン) SBD Automotive 自動運転車部門シニアエキスパート 2010年にSBDへ入社以来、コネクテッドカー部門および自動運転車部門での調査分析を担当。2013年より自動運転車部門の調査業務を統括、レポート執筆やADAS(先進運転支援システム)のユーザーエクスペリエンスのベンチマーク評価、グローバルなADAS戦略策定に関するクライアント向けコンサルティングプロジェクトに従事する。
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Alex Oyler(アレックス・オイラー) SBD Automotive Car IT部門統括責任者 Car IT部門統括責任者。SBD 米国を拠点に自動車の情報技術に関するコンサルティング業務を統括。自動車向けサイバーセキュリティ対策などを含む、複雑化するコネクテッドカーのエコシステムについて自動車業界をグローバルにサポートしている。SBD入社前はSprint Velocity事業においてソリューション設計に携わる。
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